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歴史の幸

歴史の幸「菅谷たたら山内」『語り部』~菅谷たたらの歴史物語⑩~

 
  たたらの炎をイメージさせる桂の芽吹き


二通りのたたら操業
 前回お伝えしたように、たたら製鉄には主に鋼を造るための方法と、銑鉄を造る方法の二つの方法があります。前者は「鉧押し(けらおし)」とよばれていますが、『語り部』では「鉧吹」と記されています。同様に、後者は「銑押し(ずくおし)」とよばれていますが『語り部』では「銑吹」と記されています。
鉧押しは炉から直接鋼となる鉧を取り出すことができるため「直接製鋼法」、また、銑押しは銑鉄を鋼や包丁鉄に造りかえるために、一旦、鉄に含まれる炭素分を除く脱炭や鍛錬の作業工程が加わることから「間接製鋼法」ともよばれています。ちなみに現在行われている製鉄も鉄鉱石から銑鉄を造り、これを脱炭して鋼が生産されています。
故堀江村下によると、「菅谷の鋼は他のたたらより優れているので鉧吹は多く吹きました。鉧吹と銑吹の割合は鉧吹三、銑吹七割ぐらいでした。―中略―」とされています。

銑吹より困難だった鉧吹 
 鉧吹は(直接)鋼を造る吹き方です。昔から鋼のことを生鉄(なまがね)といっています。これは粉鉄が完全に溶けていない鉄のことです。完全に溶けた鉄はさくく(割れやすく)なり、鋼の要はありません。粉鉄(こがね)が完全に溶けないうちに鉧の中に入るようにします。  ―中略―火は生きていまして、天気の具合や風の硬さがいつも違いますので、大事な火(炭の燃やし方)はそのつど違います。一番上等の炭を使っても燃え方が違いました。何十年鉧吹をしていても同じ鉧は吹けませんでした。良かった(たたらがうまく吹けた)ときは金屋子さんのおかげでした。
 鉧吹は三昼夜(連続で)吹きます。昔から鉧吹では、釜底で早く湯が沸けば調子がよく、順調なたたら吹きができるといわれています。湯が沸くというのは、粉鉄が熱でドロドロに溶けることをいい、特に鉧吹では大事にしています。
 ところで、砂鉄が解ける温度は赤目砂鉄と真砂砂鉄では多少の差はありますが概ね1400度前後とされています。これだけの温度がありますから粘土で築いた釜の壁も溶け出すのは無理もありません。

 さて、いよいよ操業の開始です。鉧吹の初めの段階を「籠(こ)もり」といい、湯が釜底の土壁にしみ込んで釜の温度を上げます。朝、火を入れてから四~六時間すると湯路(ゆず―炉の下端に開けられた穴)から湯の滓(かす―不純物)が出ます、これを初花といっています。この初花が早く出てくるほど釜の調子がよいのです。(この初花を金屋子さんに供えるという習わしがありますが『語り部』には記されていません。)

      
        初花 流れ出たときの状況により様々な形になります
                     (山内生活伝承館所蔵)

 (籠もりの段階では)赤目粉鉄の一番柔らかい砂鉄(籠もり粉鉄、薬粉鉄ともいいます)を落として(炉に投入して)湯を沸かせます。七~八時間たつと(釜の温度が上がって)「籠もり次」(の段階)に入ります。この辺りが一番難しい頃で、(村下は)金屋子さんを拝んで仕事をするときです(このとき村下は「金屋子殿は備中吉備の山中に天降り、その煙は雲としもなく晴れとしもなく、あぶらうんけんそんわか、あぶらうんけんそんわか」と呪文を唱えます)。(この段階も砂鉄はコモリ次ぎとよぶ赤目砂鉄を使うとされています。)
 この難しい時期を過ぎると、夜中には釜はだんだん安定してきます。釜の炎は、始めは赤黒かったのが段々変わって―中略―炎の色が山吹色になりつつあるときに「上り」になります。
 上りの炎は朝日の色に吹けと父親は言っていました。釜の中はさらに温度が上がります。(そうすると)砂鉄を除々に赤目から真砂に変えていき、夜中前から一気に赤目粉鉄を真砂砂鉄に切り替えるのです。実は、鉧吹で一番苦心するのがこのときなのです。このときに下手をすると「鉧」が実らない(大きくならない)からです。
二日目は中日と言っています。中日は炎を真昼の太陽の色に吹けといっていました。夕方になると鉧も太ります(大きく成長します)。釜の中の炭が下がるのも早くなり、炭を入れるのも粉鉄を落とすのも早くなります。夜中から真砂も多く落とし(投入し)、鉧はますます太ります。―中略―三日目は下りといって炎は夕方、日が落ちるときの色に吹けと教えられていました。
(三日目の)夜中三時ごろにはスジ鉄の上から炎を吹くようになり、釜は壊れる寸前になります。そして午前四時ごろには釜を壊して鉧を取り出し、高殿での操業が終わります。

 以上が鉧吹の操業のおよその工程です。操業の責任を担う村下は、釜から吹き上がる炎の色と勘に心血を注ぐ、気の抜けない仕事であったことがわかります。次回は、釜から姿を現した鉧塊が製品になるまでの流れをお伝えします。
  日光に映える桂の芽吹き

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