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歴史の幸

歴史の幸「菅谷たたら山内」『語り部』~菅谷たたらの歴史物語最終回 たたらとともに生きた人々~

     
         高殿裏山の山腹に鎮座する修繕を終えた山内祠
右:天王祠(風の神、山の神で、鉄穴師の守護神といわれる牛頭(ごず)天王を祀ります)
左:愛宕秋葉金毘羅祠(愛宕秋葉権現(火の神)と、金毘羅権現(金の神)を祀ります)

 22回にわたって紹介してきた『語り部』もいよいよ最終回となりました。これまでご紹介した『語り部』の内容は、田部家によるたたら操業の歴史、たたら製鉄法、砂鉄や木炭など原材料や大鍛冶にまつわる話、さらには村下:堀江要四郎氏の話などでした。しかし『語り部』にはこのほかにも、山内での年中行事や高殿で唄われ「たたたら唄」、あるいはほとんど知られなくなった藩政時代の悲話など多岐に及んでいます。
 菅谷たたら山内では、たたら操業時の面影が伝わる高殿の姿や、元小屋など一時代前の建物群のたたずまいや景観などが人気となり、観光スポットにもなっています。山内は今では静かな農村に変わり、今から90数年前、たたら製鉄に携わる人々の生活があったことを感じることはなかなかできません。そこで今回は『語り部』連載の最終回として、かつてたたらとともに生きた人々の暮らしの一端を、年中行事を交えてお伝えします。
 山の神祭り
 山子(炭焼き)の祭りで、旧暦で正月16日(新暦の3月4日)、5月16日(新暦の6月30日)、9月16日(新暦の10月25日)の年に三回あり、各戸順番に行っていました。この時は元小屋から酒、米、醤油などが支給されます。5月の山子祭りでは、山子は半日休みとなり、川魚を採り、雑魚汁と酒で祝って当番家でにぎやかに過ごしました。正月の山の神祭りは神さんが兎に乗って木を数えられる日といって、早朝は山に入らないようにしました。(暦の換算は大正元年を基準としました)
 秋葉社、愛宕社(あたごしゃ)の夜祭り
 旧暦6月24日(新暦の8月6日)、高殿裏山の中腹にある、秋葉社、愛宕社の神様(火の神様)に火難から守ってもらうためのお祭りで、この夜は山腹まで提灯をつけてお詣りをします。夜店も出て、地元のものが素人芝居をすることもありました。山内の人たちが一年中で一番華やいだのがこの夏祭りでした。(暦の換算は大正元年を基準としました)
 秋の金屋子神社大祭
 大正中期から10月11日に行われるようになりました。木ノ下金屋子神社で近郷のたたら、大鍛冶屋の人たちを集め、田部家が主催して行われる大祭礼でした。各山内から支配人、村下、鋼造頭(はがねづくりがしら)、山子頭など主だった人が参拝しました。午前中は各山内の対抗相撲があり、一日中盛大なお祭りでした。
 歌舞伎興行
 毎年の盆が終わると、上方歌舞伎一座が雇い入れられ、各山内で3~4日歌舞伎興行が行われました。(もちろん会場は高殿でした。)年によっては町の田部家で興行があり、見に出かけることもありました。山内中の人が楽しみに待っていたものでした。

             
            緑が映える6月のかつらの木

 山内の暮らし
 山内では、田部家から住民に長屋のほか、麻畑と野菜畑が貸し与えられていました。山内では春になると畑に麻の種をまいて7月下旬に刈り取り、その日のうちに畑に溝を切って大根の種をまきました。11月下旬には大根を収穫し、その跡に丸太で冬期間に使用する木炭を入れる炭置き小屋を建てました。
 (たたら従事者は)高殿で操業するときは、朝、昼、夕、夜と四度の食事がありました。家のものは(我慢して)菜っ葉の雑炊を食べることもありましたが、山内ではお蔭でご飯を食べることができました。炭焼き(山子)も重労働でした。片道4㎞ぐらいを通って炭を焼き、帰りにはできた炭を背負って高殿に運ぶことになっていたのです。そのため、山子の弁当は5合の米が必要なほどでした。(『語り部』より)
 さて、時代は下りますが、昭和43年に島根県教育委員会から刊行された『菅谷鈩』によると、明治18年(1885)、今から130年前には山内に34世帯、158人の人が暮らしていました。このうち、たたらの従事者は52人となっており、山内全体の約三分の一に当たるたたら従事者が残りの老若男女の暮らしを支えていたことが分かります。たたら従事者の給料は米で支払われ、現金収入はわずかでしたので、当時、山内の生活は決して楽ではなかったようです。
たたら製鉄が途絶えて久しくなった現在、たたら関連の様々な施設や資料は、外面的には鋼や鉄ができるまでの工程の魅力やすごさを伝えてくれますが、その一方ではこのように、たたら製鉄がたたら従事者の汗の結晶で成り立っていたといっても過言ではありません。
次回は菅谷の近況に戻って元小屋で行われている修理工事の様子をお伝えします。

      
           金屋子神社の前を流れる菅谷川

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