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歴史の幸「菅谷たたら山内」『語り部』~菅谷たたらの歴史物語⑯~大鍛冶あれこれ(上)

   
      大鍛冶関連資料が展示される鉄の歴史博物館二号館内部
 大鍛冶屋で行われていた本場(ほんば)の作業の様子は、吉田町にある          「鉄の歴史博物館」2号館で知ることができます。
         
しばらく『語り部』の本題から話題が外れていましたが、菅谷たたらの歴史物語⑭に続いて、再びたたら操業と切り離すことのできない大鍛冶についてご紹介します。

大鍛冶屋とは
永代たたらのうち、鉧吹(けらぶき)からつくられた鉧には、質の違ういろいろな鉄が含まれています。最上質の鋼である玉鋼は、鉧塊全体の三割程度しかないといわれています。そのほかの大部分は鋼とも銑(ずく、銑鉄)ともつかない雑多な鉄で、目白(めじろ)、砂味(じゃみ)、鉧銑(けらずく)、歩鉧(ぶけら)、鉧細(けらこま)などとこまかく分けられています。このうち、目白や鉧銑などはそのまま出荷することができたのですが、歩鉧や鉧細などの雑鉄はそのままでは鉄材にはなりません。どのように利用するかというと、左下鉄(さげがね)とよばれる銑鉄を脱炭して炭素分を下げた鉄にこの雑鉄を混ぜ、再び鍛錬してはじめて包丁鉄という製品になるのです。鍛冶場でこの製品に仕上げるまでの作業を行うのが大鍛冶屋です。

分類された鉧
  左上:目白 上質の小塊の鋼     右上:玉鋼 最上質の鋼
  左下:造粉 玉鋼が粉砕されたもの  右下:砂味 目白より質が落ちたもの
(鉄の歴史博物館所蔵)

大鍛冶には、左下場(さげば)と本場(ほんば)の二つの作業工程があります。ちなみに、今ではあまり見られなくなりましたが、刀鍛冶や鍬、鎌などの鉄製品を作る鍛冶屋さんは、大鍛冶に対して小鍛冶(こかじ)とよんでいます。

大鍛冶屋で行われていた作業の様子
左下場の作業
左下職(左下鉄をつくる現場責任者)は、火窪の上に銑鉄を馬蹄形に積み、その周りに小炭をかけて鞴(ふいご)で火をおこします。すると熱火によって銑鉄に3%以上含まれていた炭素量は大きく下がります。脱炭された銑鉄は、たらたらと溶けて炉の底に落ちるのですが、この鉄を取り出して炭素量を0.7%ぐらいにしたものを左下鉄とよびます。左下場の「さげ」とは、銑鉄に含まれている炭素の比率を下げるところから左下場とよばれるのです(鉄の歴史博物館江本氏談)。
ところで、たたら製鉄からできる鉄は鋼(鉧)だけではありません。鉧をつくるための製法(鉧押し)であっても銑鉄はできるのです。もちろん銑鉄(銑、ずく)をつくることを目的とした銑押し(ずくおし)も行われ、大鍛冶屋に持ち込まれていました。このことから、たたら製法のうち、鉧押し法では主として直接鋼ができるので直接製鉄法とよばれ、銑押しでは、一旦、左下鉄の原料となる銑鉄がつくられ、これを基にして包丁鉄がつくられることから、間接製鉄法ともよばれています。たたら製鉄では、日本刀の素材となる良質の鋼がつくられるというイメージがありますが、鋼のみがつくられていたわけではないのです。

   

    中段  熱した鉄塊をつかむカナハシ 長さが103㎝あります
    中段上 包丁鉄 長さ91㎝ 幅4~4.3㎝ 厚さ2㎝ 重量4.85㎏  
    下段左 包丁鉄 長さ55.5㎝ 幅10.5㎝ 厚さ1㎝ 重量4.65㎏
    下段右 大工が作業時に履くわら草履
                        (鉄の歴史博物館所蔵)

本場の作業
本場では、まず左下職が左下鉄と鋼を混ぜた鉄を九等分して一つを約30㎏とし、これを本場の窪(炉)で熱焼します。そこで溶けて固まりかけた鉄を、左下は火窪から取り出して大工職(大鍛冶屋全体の責任者)に渡します。大工職は、この焼けた鉄を金床に載せて手子(てご)( 向打、むこうちともいいます)に打たせ、平たくして二枚に切ります。これを一焼といいます。それをまた火窪で熱焼しては金床に載せ、向打四人が交互に槌で打ちます。段々打ち延ばしていき、二枚をさらに四枚に切り分けます。これを二焼といます。この四枚を一枚ずつ熱焼しては鍛錬を繰り返して整形し、やっと四枚の包丁鉄ができるのです。この段階で、炭素量が約0.7%あった左下鉄が0.3%以下の鉄板(鋼)となり、包丁鉄となります。
作業の一回分にあたる約30㎏の鉄塊から、最終的に四枚で約20㎏(一枚約5㎏)の包丁鉄がつくられます。『語り部』には、一焼の作業から始まって四枚の包丁鉄ができるまでに約一時間かかったとあります。この工程が一日に九回繰り返されるため、本場で槌を打つ向打は相当な重労働となります。また、本場の作業は長時間の作業で、昼間は気が散るため、田部家が経営する大鍛冶屋では、夜の十時ごろから始まって終わるのが翌朝の朝九時ごろであったと記されています。
 


   上段  長さ57.5㎝ 幅4.5㎝ 厚さ1.3㎝ 重量2.5㎏
   下段  長さ45.0㎝ 幅8.5㎝ 厚さ2.0㎝ 重量5.7㎏
             包丁鉄のいろいろ   (鉄の歴史博物館所蔵)
       
      
      輝きを放つ包丁鉄の切断面  (鉄の歴史博物館所蔵)

このように、本場で行われた作業の大部分を占めていたのが、向打によって行われた鍛錬です。この作業は単に熱した鉄を槌で打てばよいというものではありませんでした。
 次回は大工と向打の絶妙な職人技と作業の様子をお伝えします。

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